採点中に笑うとは
受験生の皆さん、こんにちは。
受験の季節は、生徒だけでなく教員にとってもしんどく、緊張の続く時期です。特に英語教員にとって、英作文の採点は非常に疲れる作業です。通常、同じ答案を二人の採点者が話し合った同じ採点基準で別々に採点し、その結果を合わせて確認し、さらに第三の採点者が点検します。それでも残念ながら第三者がミスを発見することがあります。入試では、わずか一問、時にはたった一点の差で合否が変わることもあるため、その責任は決して軽くありません。
これは私自身の経験ではありませんが、ある英作文の授業で「その母親は赤ちゃんを膝の上においていた。」という日本文が出題されたそうです。
一部の受験生は、「膝」は knee という単語であることを知っています。格闘技で knee kick と言えば「膝蹴り」のことです。そこで、
The mother had her baby on her knee.
と訳した受験生がいました。
採点官は思わず少し笑ってしまったそうです。文法としては間違いではありません。しかし英語では、赤ちゃんを「膝の上に乗せる」と言うときは普通 lap を使います。knee は本来、膝関節の一点、つまり膝の先(膝頭)を指す言葉だからです。
もし on her knee と言うと、赤ちゃんがまるでお母さんの膝頭の上にちょこんと乗っているように聞こえてしまいます。小さな赤ちゃんが膝の関節の上でバランスを取りながら座っている場面を想像すると、まるでサーカスの曲芸のようです。
このように、採点官たちは、受験生には少し不謹慎かもしれませんが、思わず笑ってしまう答案に出会うことがあります。こうした瞬間でもないと、緊張の続く採点作業のストレスはなかなか耐えられないのかもしれません。そして次の答案用紙に
The mother had the baby on her lap.
と書かれているのを見ると、採点官はほっと胸をなでおろすのです。( lap は「座ったときの太ももの上の部分全体」を指す言葉で、左右の太ももを合わせた 一つの場所として扱われます。そのため普通は 単数形で使います。)
間違えやすいのは「膝」だけではありません。例えば「足」という言葉もその一つです。日本語では「足」という一語で、太ももからつま先までをまとめて表します。しかし英語では、この部分は二つに分かれています。太ももから足首までが leg、足首から下が foot です。したがって、足の裏が痛いときに My leg hurts. と言うと、脚全体が痛いという意味になってしまいます。本来は My foot hurts. と言う必要があります。
思い出しました。ミスはさまざまな箇所で起こります。これは入試ではなく私の授業でのことですが、「その犬は私の足を噛んだ」という日本文を、ある生徒が
The dog chewed my leg.
と訳していました。chew も「噛む」という意味の動詞ですが、chewing gum という言葉からも分かるように、「クチャクチャと噛む」という意味になります。
この場合は、
The dog bit my leg.
と言うべきです。私はその生徒が一生懸命、辞書を引いて書いていたのを知っていたので、授業の後、先ずそれを褒め、そっと教えました。少し恥ずかしそうにしていた様子が記憶に残っています。けれど、ミスを重ねる体験こそが英語力向上の肝です。その生徒の英語力はその後も着実に伸びました。
少し脱線しましたが、このように、日本語と英語では体の部位を表す範囲や、動詞のニュアンスが異なることが少なくありません。単語を覚えるだけでなく、「英語ではどこまでをその言葉で指すのか」を理解することが大切です。
