英語の民間試験
今日は2025年度英検第3回の二次試験の日です。私の受講生の中からも数名が受験します。直前対策も行いましたので、きっと合格してくれるだろうと期待しています。
英検は現在、日本国内で最も広く利用されている英語検定試験です。私は面接官として約30年間その運営に関わってきましたので、このこと自体は大変嬉しく思っています。しかし、英語の外部試験は英検だけではありません。TOEFL、GTECなど、さまざまな試験が存在しています。
数年前、日本政府はそれらを活用して、大学入試における英語試験の方法を大きく変えようとしました。
文部科学省は、それまでの全国共通試験だけでなく、英検、TOEFL、GTECなどの民間試験を大学入試に利用する計画を立てました。
この計画の目的は比較的明確でした。従来の大学入試では、主に「読む力」と「聞く力」が評価の中心でした。しかし政府は、英語の「話す力」や「書く力」も評価すべきだと考えたのです。民間の英語試験にはすでにこれらの技能を測定する仕組みがあり、それを活用すれば日本の英語教育の改善につながるのではないかと期待されていました。
しかし、この計画にはすぐに多くの問題が指摘されるようになりました。
まず、公平性の問題です。民間試験は企業が運営しており、受験には費用がかかります。何度も受験して高い点数を狙える生徒もいれば、経済的な理由でそれが難しい生徒もいます。そのため、家庭の経済状況によって有利・不利が生まれるのではないかという批判が出ました。
次に、地域格差の問題があります。試験会場の多くが大都市に集中していたため、地方に住む生徒は試験を受けるために長距離を移動しなければならない場合がありました。これは地方の生徒にとって不公平ではないかと考えられました。
さらに、大学側からも疑問の声が上がりました。一部の大学は、複数の民間試験を同じ基準で比較することが本当に可能なのかという点に疑問を持っていました。それぞれの試験は形式や難易度が異なるため、公平な評価が難しいのではないかと考えられたのです。
こうした批判が全国で広がり、最終的に2019年11月、文部科学省はこの計画を全面的に見送ることを決定しました。
当時、私は勤務校で外部試験の担当をしていました。そのため、すでに生徒に配付して記入させていた書類をすべて破棄せざるを得ませんでした。
しかも、その決定は正式な通達として学校に届く前に、ニュースで突然知らされたのです。通常であれば、文部科学省からの通知は各都道府県の教育委員会を通して学校現場に伝えられます。しかしこのときは、生徒も教員もニュースで知るという、極めて異例で混乱を招く対応でした。
生徒が困惑したのは当然ですが、担当教員の怒りも全国で広がりました。私もその一人です。
この出来事は、公平な教育制度を作ることの難しさを示しています。英語の「話す力」や「書く力」を評価することの重要性には多くの人が同意しています。しかし、その評価方法はすべての生徒にとって公平でなければなりません。
文部科学省は十分な議論を尽くさないまま制度を進め、そして最終的には自らその計画を停止しました。この出来事を見ていた高校生の中には、「大人の決定は必ずしも信頼できるものではない」と感じた人も少なくなかったのではないかと思います。
教育制度を変えるのであれば、現場の教師、生徒、大学、そして社会全体が納得できる形で進める必要があります。制度は理念だけでは動きません。実際に運用する現場の状況を踏まえた慎重な設計が不可欠です。
現在でも、日本の英語試験のあり方についての議論は続いています。英語教育の改革は必要ですが、それは十分な議論と準備の上で行われるべきだと、私は強く感じています。
