本気で頑張った10ヶ月

私がこれまで指導してきた生徒たちのすべてが英検に合格したわけではありません。

英検1級に合格したのは3名、準1級にも多くの生徒を導きましたが、尽力しても結果に結びつけてあげれなかった子もいます。

今日は、その「合格には届かなかった」ある一人の生徒との記憶を綴りたいと思います。

――それは、3年前の春。

まだ冷たい風が頬をなでる季節、かつての同僚で簿記指導の名手・鈴木先生から電話がありました。

「ぜひ、この子を見てやってほしい」

託されたのは、中学3年になる少女。地元の商業高校主催の簿記教室に通い、学ぶことに飢え、素直に耳を傾ける、そんな光を秘めた子でした。

鈴木先生と私は「過去問20回を3周すれば、どんな試験も突破できる」と信じており、それは英検にも通じる信念でした。私は現職教員でしたので、無償で指導を引き受けました。「英語、好きかもしれない」――その一言が、私には何よりの報いだからです。

やがて週1回のオンライン授業が始まりました。彼女は毎回、真剣に質問を投げかけ、私は全力で応えました。英作文の添削、進捗管理、計画的な演習……彼女はすべてに忠実に取り組み、3級、準2級、そして2級へと合格を重ねていきました。部活のバスケットボールとも両立しながら、ついには学年2位の成績に。

そして迎えた準1級挑戦。中3の冬、正月を返上し、発音練習にも励みながら、20回分の過去問を3周――計60回。高校受験を控えながらも、彼女は決して歩みを止めませんでした。

自己模試では合格ラインを越えた回もありました。

手応えを感じつつ受けた一次試験――結果は、数点差で不合格。

画面越しに映る彼女の悔しさに、私も胸が締めつけられました。

けれど私は、どうしても伝えたかったのです。

「君の努力は、決して無駄じゃなかった」と。

人間万事塞翁が馬。努力の先には、目に見える成功を超えた、もっと確かなものが待っている。

あの10か月間、彼女は試験を超えて「自分を信じて学び抜く力」を身につけていました。

その後、彼女は商業高校に入学し、英語の時間を簿記に注ぎ、ついに日商簿記1級に合格。今では公認会計士試験・税理士試験にも挑戦中で、ある大学の自己推薦入試を目指しています。英語のスコアも、既に条件をクリアしています。

試験には落ちましたが、合格という二文字以上に大切なものを、彼女は確かに自分の手でつかみ取っていたのです。

大切なのは――その時、本気で向き合ったかどうか。それだけです。

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