日本は終の住処となり得るか

皆さんは今、英語を勉強しながら、自然と海外へと視野を広げていることと思う。では、海外の人々は日本をどう見ているのだろうか。

今日は、そんな視点の一端を垣間見ることができる、ある外国人の友人のお話を紹介したい。

最近、日本を訪れる外国人が増えているが、日本に「永住」しようとする外国人も確実に増えている。帰化を申請して日本国籍を取得する人は、毎年およそ1万人にのぼり、昨年末時点での累計は約61万人に達したという統計も出ている。

私の友人アリステアも、そうした外国人のひとりだ。彼はこの秋、それまで勤めていたアラブ首長国連邦(UAE)の大学を退職し、日本に永住することを決めている。その準備として、昨年すでに奈良の由緒ある古民家を購入している。つまり、日本への移住は突発的なものではなく、綿密に計画されたものだった。

長期休暇を利用しては来日し、そのたびに古民家の修理を進めてきた。屋根の補修など大がかりな工事については、奥様の親戚に鍵を預け、信頼できる業者に依頼しているという。

彼が購入した古民家は、明治13年に建てられたものだ。広々とした中庭と小さな日本庭園を中心に、8〜9棟の建物が立ち並んでいる。場所は奈良県の「上街道(かみかいどう)」沿い。かつて皇族が伊勢神宮へ向かう途中に立ち寄ったと伝えられる、歴史と文化の香りに満ちた土地である。もともとは、お茶や絹の商いに使われていた建物で、明治時代から長く一つの家系が守ってきたが、今ではアリステアたちがその新たな担い手となっている。

アリステアが初めて日本を訪れたのは今から35年前のこと。当時、ALT(外国語指導助手)として公立高校に赴任し、私はそのとき、外国人教員の担当をしていた。彼は明るく誠実な人柄で、生徒や同僚たちにもすぐに親しまれた。帰国後も連絡は途切れることなく、来日するたびに再会を重ねてきた。

奥様は日本人で、娘さんが二人いる。育った環境の影響か、娘さんたちは日本語をほとんど話すことができないが、日本への思いは深いようだ。家族は、日本と海外の文化を行き来しながら、自然なかたちで多文化的な生活を営んでいるように見える。

現在、アリステアはUAEのアブダビ首長国にあるアル・アインという都市の大学で働いている。そこはオマーンとの国境に近く、何十キロにも及ぶ砂漠に囲まれた町だ。パートナーであるさちこさんの友人の中には、ラクダを飼っている人もおり、そんなユニークな環境のなかで、家族全員が程度の差こそあれアラビア語を使って暮らしている。

彼の専門はAI、ロボティクス、そして認知トレーニングである。『脳トレ』ゲームで知られる川島隆太教授との共同研究にも携わってきた。教育学の知見と組み合わせて、大学教員向けのトレーニングプログラムや、学部生向けのアクセラレータープログラムを開発・実施してきた。そうした刺激的で先端的な研究環境を手放してまで、彼が日本への移住を選んだのは、日本という国に対する深い思いと魅力があるからだろう。

静寂に包まれた日本の古民家での暮らしと、日々刺激にあふれた中東の砂漠での生活。アリステアとその家族は、そうした両極の文化と風土を行き来してきたが、今、自分たちにしかできない新しい暮らしのかたちを築こうとしている

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