常に複数形で用いられる名詞

中学3年生のとき、「彼は郊外に住んでいます」という文が英語では He lives in the suburbs. のように suburbs が複数形で用いられていることに違和感がありました。彼が住んでいるのは一地点のはずなのに、なぜ複数形になるのだろう、と不思議に感じたのです。

後に知ったことですが、英語には文法上、常に複数形で扱われる名詞が存在します。日本語では単数・複数の区別をそれほど厳密に意識しないため、学習者にとってはやや奇妙に感じられる現象かもしれません。しかし、こうした語の背景を理解すると、英語という言語が世界をどのように捉えているのかが見えてきます。

まず、意味の性質上、集合的・総体的に把握される語があります。たとえば arms(武器)、goods / wares(商品)、earnings(収入)、savings(貯金)、riches(富)などは、いずれも一つの具体物というより、「複数の要素から成る全体」を指す概念です。

damages(損害賠償金)も、さまざまな損失の合計として算出されるため、単数ではなく複数形で表されます。

先述の suburbs と同様に、surroundings(環境)や outskirts(町外れ)も、ある一点ではなく、周囲に広がる複数の要素の集合体として理解されています。

また、抽象的な意味を持つ語にも複数形は多く見られます。

pains(骨折り、努力)や particulars(詳細)は、「一つの痛み」や「一つの詳細」というより、積み重なった多くの要素を含む概念です。英語では、このような「分解可能な複数の要素のまとまり」という発想が、複数形という形に反映されているのです。

さらに、形状の特徴から複数形で用いられる語もあります。衣服や道具のうち、左右対称で二つの部分から成るものが代表例です。

pants / trousers(ズボン)、shorts、pyjamas は両脚部分を持ちますし、scissors(はさみ)、pliers(やっとこ)、binoculars(双眼鏡)、glasses(眼鏡)、scales(天秤)、shears(大ばさみ)なども、いずれも二つの対になる部分で構成されています。

このような物は、英語では「二つで一組」という感覚が強く、常に複数形で扱われます。

The scissors are on the table. のように動詞は複数形になりますが、話者の意識としては「一丁のはさみ」を指しています。この文法と意味のずれは、言語が世界をどのように切り取っているかを示す好例だと言えるでしょう。

常に複数形で使われる語は、単なる暗記事項ではありません。それは英語話者の物の見方、すなわち「集合として捉える」「対になった構造として理解する」という思考の反映です。こうした視点を理解することは、語彙力の向上にとどまらず、英語という言語文化そのものへの理解を深めることにもつながるのではないでしょうか。

早川

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